おもいで

今日は思い出について書こうかなと思う。

過去を振り返るのもいい頭の体操になるかなって思って……。

でもいい思い出がなかなか無いんだよな、彼女出来たことも無いし親友いないし……

これだけはあまり描きたくなかった秘密のお話でも描こうかな。閲覧注意というわけではないけど今までちょっと嘘をついてたって意味でまあ、アレな話ですよね。

 

 

 

これはバイトしてた時の話なんだけど、当時バイトの休みが月に5日とかしかなくて休みの日はもっぱらパチンコ行ってたんですよね。本当やる気が無くてパチンコやるか家で身体を休めるかしか気力がなくて……

ある時『疲れ』を感じたのかマッサージに行ってみました、60分6,000円くらいのエロいことなしのショッピングモールにあるマッサージ店に。

まあ、普通にマッサージされるんですけどいつの日かな?3回目ぐらいで50歳くらいのおばさんに当たって何故かめちゃくちゃに話しかけてくれて童貞の俺は『女』を知らないからその人を『女』だと思ってマッサージよりも通っちゃったわけ、マッサージもうまかったんですけどね……

仲良く話すうちにどんどんと営業トークなのかめちゃくちゃいちゃいちゃ出来てしまい連絡先も交換してしまった、俺はこの時まだ……まだ何も大事な所に触れていなかった……。

そして時は流れて正月、パチンコのバイトは大忙しで老人の相手をして10連勤あたりしてヘトヘトな所にLINEが1通来た。おばさんからだ。

「はじめちゃん(←僕の名前です)今度おやすみいつかな〜?」みたいな営業トークで、こっちは「休みないですよ〜初詣すら行けてないです〜」と返信した。

そしたらおばさんが「浅草で初詣付き合ってあげる!」と返事が来た。

俺はね、気持ち悪いと思われるけどマジで嬉しかったよ。歳の差30も離れてるのに初めての恋?というかドキドキが生まれたんだぜ?めちゃくちゃ早く了承の返事を返した。

そして「デート」当日、浅草駅に待ち合わせをした。コートを羽織ってるせいか緊張のせいか寒さは不思議と感じなかった。

LINEで居場所を伝え合う、初めてがこれなのかと甘いコーヒーをすする……

おばさんが着いた。俺の顔を見るとマッサージ店で見る笑顔が見れた。たしか浅草寺の雷門近くで待ち合わせてたのでめちゃくちゃ外国人が多かったのが記憶にある。

「待った〜?じゃあお詣り行こっか!」

おばさんが俺の手を握る。人混みからはぐれないようにか強く。強すぎずに。

(あぁ……これが女の手……)

虚しいでしょ?初めてがしわしわの手だよ。

でもその時俺はむしろ嬉しかった、なんか人として『普通の人間』として認められたみたいで。

お詣りはスムーズにすすみ、お茶に行った。

抹茶の店でコーヒーを頼む俺とビールを頼むおばさん。……よく考えたらなんでビールなんだろうな?

お茶(?)を飲みながらいろいろ話した、従業員の話やら家族の話やら。暖かかった。

そうか、俺が好きとか思ってるのはこの時間なのかもしれないなとか思っていた。

充分話したのでお会計。お金を払ったのは俺だった。これは童貞の強がりなのか女の人に払わさせてはいけないっていうポリシーとどうせもうデート出来ないだろうという意味合いを込めて払った。周りの目がぽかんとしてた、当たり前だよなおばさんが払うべきの年齢差なんだもの。

茶屋から出ておばさんが話しながらいろいろ浅草について話してくれた、まあまあ家から近いらしい。知らない浅草を知れてる反面俺は下心しかなかった。童貞ってマジで気持ち悪いね……

ホテルでの休憩しか求めてなかった、落語する劇場とかを見るフリしてホテルをずーっと探してた。なかった。

俺はなにを思ったのか分からず先走っておばさんに「きゅ、休憩しません!!??」みたいに言ってしまった。

「あ、ごめんね。ちょっとそういうのは……」

断られた、当たり前だよな。だって、だってだって……「アッそうですよね……」と呟いた。

そして手を繋ぎまだまだ歩いた、美味しそうなものを見たりしたり……正直ここらへんあまり覚えてない。

別れの時。家に帰らなくてはならないらしい。

ここで俺は重要でしかも当たり前な事に気がついた。

 

 

(そういえば当たり前だったけど人妻なのかなそれともバツなのかな……)

と。一度もそういう話はなぜか触れなかった、自分の盲目さを悔いる、は間違いだけど気持ち悪いと心底軽蔑した……

帰りの電車の路線は一緒なので思い切ってというか聞かずにはいられなかった。

「あの、おばさんってこれから旦那さんの所に帰るんですよね?」

「そうだよ!そういえば話してなかったね〜!そろそろご飯とか作らなきゃだから!」

「そうですよねー………」

「あとちょいで着くけど今日は楽しかったよ!またお店でも会おうね!」

「はい……。」

「じゃあね!」

手を振る、別れの挨拶。

帰りの電車、夕日を見ていた。

今日あったこと、お詣りに行ってお茶に行ったこと……まるで母親のように優しくしてくれたこと……

おばさんは間違いなく『救い』だったと思う、相談も乗ってくれたしいい人だったし……

それを勘違いした俺は……

気持ち悪いよね……………

俺の休みはこうして終わった。

マッサージ店に行きづらくなり、癒しがなくなった。

でも心の何処かでは癒しを求めてしまう。

電車の窓から刻まれた夕日は、鮮明に覚えている。